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中国
【省エネ・環境】

長江上流の無秩序な水力発電開発がもたらす生態系バランスの失調 (11/06/14)
2011/6/22
中国【省エネ・環境】

 水利部、中国長江三峡集団公司、中国科学院等の権威機関は先般、長江上流の一部での過度で無秩序な開発問題が深刻であり、現地の生態バランスに影響を及ぼしていることを認めた。

 水利部長江水利委員会長江科学院、水利部黄河水利委員会水資源管理指令局、中国長江三峡集団公司、中国科学院南京地理湖泊研究所並びにWWF(世界自然基金)は先日、合同で《中国環境流研究と実践》と題するレポートを発表した。

 同レポートは、長江上流のステップ式水力発電開発の混乱の現状を指摘し、長江上流の本流・支流で大規模に建設されているステップ式水力発電所及び発電所ダムが回遊性の魚類のルートを阻害し、また、ダムの水流調節によって河川の生態系にも様々な深刻な影響が出ているとしている。

 特に、長江上流の金沙江で建設と計画が進められている烏東徳、白鶴灘、溪洛渡並びに向家ハはいずれも超大型ダムであり、これら巨大水力発電所の建設によって生態系に極めて大きな影響がもたらされる。一つは、水文過程の変化であり、発電所完成後のダムの水流調節作用によって下流の排泄過程に顕著な均一化が生じ、渇水期の流量が増加し、増水ピーク時の流量が減少する。もう一つは、大型ダムの建設によって河川の連続性が失われる。金沙江の下流は様々な回遊性魚類の重要な生息地であり、長江の希少魚類の産卵場も同地に分布している。ステップ式ダムの建設によって回遊性魚類のルートが阻害され、水流条件の変化によって希少魚類の生息環境に激しい変化が生じる。産卵場が破壊され、魚類の生存に影響して、現地の希少魚類は危機に瀕する。同時に水質にも富栄養化のリスクが生じる。

 同レポートは特に「岷江の現在の秩序なき水力発電開発は深刻な問題を誘発している」としている。民間資本の導入と地方政府の盲目的な資本誘致によって計画条件に合致しない小型導水式発電所が多数出現しており、水流の利用度が高く、増水期以外でも水流を全て圧力パイプに引き入れるため、相当長期にわたって、天然河川の川枯れや断流をもたらす。レポートによると、現在、岷江中流の汚染は深刻化しており、魚類の大量死事件が恒常的に発生していて、楽観を許さない。「一部流域では生態環境はすでに負担に耐えられなくなっている。もし人類の生産と生活を一方的に重視して生態系の必要性を軽視するなら、生態系に対して後戻りできない破壊をもたらす可能性が高い」と、国家自然科学基金委員会主任で中国科学院院士の陳宜瑜氏は語る。

 (第一財経日報 6月14日)