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【省エネ・環境】

中国が低炭素製品認証制度を推進へ (12/10/29)
2012/11/5
中国【省エネ・環境】

 国家発展改革委員会と国家認証認可監督管理委員会が共同で策定した《低炭素製品認証管理弁法(暫定)》並びに関連技術サポート文書が近日公布される。自発的な低炭素製品認証制度が全国において統一的に推進されることになる。

 《経済参考報》紙の情報によると、環境保護の観念が人々の心の中で深まる中、中国ではここ数年、様々な省エネ・環境保護製品の認証が実施されている。省エネ製品の面では、2006年に国家第11次5ヵ年規画綱要において、義務的なエネルギー効率標識制度と省エネ製品認証制度を推進することが明確にされた。2008年には《全民省エネ行動の徹底的展開に関する国務院弁公庁の通達》において、消費者がエネルギー効率標識2級以上もしくは省エネ製品認証マークのある製品を購入、使用するよう奨励、誘導することが打ち出された。

 環境保護部環境発展センターの唐丁丁主任の説明によると、早くも2009年に同センターは「中国環境マーク低炭素製品」認証の研究開発作業をスタートさせ、その1年後、環境保護部は4種類の製品に対する中国環境マーク低炭素製品標準を公布した。

 現在、省エネ製品、環境保護製品及び今後の低炭素製品には多重的な認証システムがある。この点について、中国の品質検査関係部門の匿名希望の専門家は次のように説明した。消費者にとって省エネ製品はエネルギー使用コスト(電気料金や水道料金など)の節約が重要であり、環境保護製品は有毒・有害物質の排出(例えばフローリングのホルムアルデヒドなど)の排出を減らすことが重要である。しかし、低炭素製品は温暖化ガスの排出削減に重点を置いている。環境保護部の「中国環境マーク低炭素製品」は家庭用冷房器具、家庭用電気洗濯機、多機能コピー機、デジタル式一体型プリンタなど少数の製品のみに限られている。

 かつて外交部の随員として《京都議定書》交渉に参加したことのある中国の炭素排出削減の専門家・銭国強氏の見方によると、実際には多種の認証があっても相互に排他的なものではなく、今後は企業の自発的認証を得ることのできる者、財政部門から政府優先調達、財政補助や課税減免といった支援措置を獲得できる者、権威的な国際機関や先進国の低炭素マーク相互認証を得た者が、自身の使用範囲を拡大することが出来る。

 中国品質認証センター(CQC)は、国家発展改革委員会と国家認証認可監督管理委員会の共同実施による「気候変動対応専門研究プロジェクト――中国認証制度の研究」事業の研究作業を請け負っている。CQC低炭素・エネルギー効率研究部の田暁飛部長が明らかにしたところによると、中国は統一的な低炭素製品認証制度を確立することになる。統一的な低炭素製品リスト、統一的な国家標準、認証技術規範及び認証規則、統一的な認証証書及び認証マークが実施される。国家低炭素製品認証の製品リストは、国の関係部門が策定、調整、公布を行うことになる。その中には《低炭素製品認証技術規範》(以下、技術規範と略す)や《低炭素製品炭素排出削減評価指標》が含まれる、製品の生産者もしくは販売者は認証機関に低炭素製品認証を委託することが出来る。

 基本的な制度設計によると、低炭素製品認証証書の有効期間は3年。いかなる組織や個人といえども、低炭素製品認証証書と認証マークの偽造、変造、不正使用、売買や譲渡を行ってはならない。

 CQCの解釈では、省エネ製品や環境保護製品とは異なり、低炭素製品とは、同種の製品もしくは機能が同等の製品と比較して、炭素排出量の値が当該製品の国家標準もしくは技術規範の中で関係する低炭素評価指標要件に適合する製品を指す。

 「技術規範」中の低炭素製品評価方案については、すでに国の既存の標準や市場及び企業の調査研究を基礎に、製品のライフサイクルの段階別に評価指標が設定されており、指標毎に排出上限値が設定されているとのことである。例えば、家庭用電気冷蔵庫については「リサイクル率」等の低炭素に関わる属性の上限値が設定されている。

 説明によると、政策が実施に移されると、「技術規範」には4種類のエネルギー使用製品と2種類の非エネルギー使用製品が盛り込まれる見込みである。両者の違いは、使用段階においてエネルギー(電力等の二次エネルギーもしくは石炭等の一次エネルギー)を使用するかどうかにある。例えば、中国北部の建築物の壁に遍く使用されている特殊材料は、設置後にエネルギーを直接使用することはないが、保温と断熱によって建築物の空調使用を減らし、延いては温暖化ガスの排出を減らすことになる。

 国家発展改革委員会と国家認証認可監督管理委員会は、「低炭素製品」を申請するメーカー対して、技術上のハードルを設定している。具体的には、エネルギー使用製品には「実験室検査」+「現場検査」「追跡検査」の認証方式を採用する。非エネルギー使用製品については「現場検査」+「追跡検査」の認証方式を採用する。

 家庭用冷蔵庫を例に挙げると、国家発展改革委員会気候司が各大エリア電力網の排出係数を公示し、国が指定する認証機関が各メーカーの電気メーターのモニタリングを行うとともに、電力使用量を製品毎に振り分ける。簡単に言えば、電力使用量に排出係数を乗じたものが炭素排出量になる。

 前出の田暁飛部長によると、「低炭素製品認証」は、省エネ製品は「省エネになるが低炭素にはならない」という問題を解決するものである。例えば、エネルギー効率1級のエアコンは通常の2級のエアコンよりも熱交換器の銅使用量の高いものがあり、こうした製品は節電になるが、銅の採掘や精錬過程における炭素排出量が極めて大きい。エネルギー効率1級のエアコンが1.5キロの銅を使用し、2級エアコンが0.5キロの銅を使っていると仮定すると、2級エアコンはエネルギー効率が低いものの、1級エアコンよりもはるかに低炭素ということになる。

 これは「製品ライフサイクル」という概念に関わる問題である。「エアコンのエネルギー効率の向上が、技術のイノベーションではなく過度の銅材の使用によってなされ、これらの銅材を有効に回収できない場合、当該製品は使用段階を見ると低炭素ではあるが、原材料の採収や製品の回収等の段階から見ると高炭素ということになる」と田暁飛部長は説明する。

 世界的に見て、低炭素経済の発展を促進し、企業が低炭素製品を生産し、低炭素サービスを提供するよう奨励するため、ますます多くの国が製品のライフサイクルにおける炭素排出量の評価と公示を進め、製品に炭素マークを授与し、低炭素製品認証を展開するようになっている。

 2006年、英国のカーボントラスト(Carbon Trust)は「炭素削減ラベル計画(Carbon Reduction Label Scheme)」を展開して、低炭素製品認証の先駆けとなった。カーボントラストはすでにテスコ、コカコーラ、Bootsなど20社以上のメーカーにサービスを提供している。2008年10月、英国はPAS2050《製品カーボンフット審査》規格を公布した。現在、国、組織及び企業が行っている製品炭素排出評価活動のほとんどは、程度の差はあれ、この規格を参考にしている。

 しかしながら、「製品ライフサイクル」構想は「管理弁法」には未だに見られない。策定に参加している官僚と専門家によると、中国国内の企業は、原材料から、中間製品、完成品、販売業者、消費者に到るまでの包括的な炭素排出データベースを未だ確立しておらず、また、廃棄品の義務的回収制度も確立されていない。生産工場から販売業者への輸送過程においても移動排出源の炭素排出に対してモニタリングを行うことは困難である。そのため、「カーボンフット」を実施することは非現実的である。「管理弁法」が重点的に着目しているのは原材料の収集段階と製品の製造及び使用段階である。

 銭国強氏は、中国の低炭素製品認証制度は「全ライフサイクル」モデルの採用を全く考慮していないため、先進国のウォルマートやIKEAなど「低炭素」や「ゼロ炭素」を自発的に実践する大企業は調達過程における炭素排出基準を日毎に引き上げ、そのため国内の上流のサプライヤーにとってはますます圧力が大きくなっている。第12次5ヵ年規画や第13次5ヵ年規画期に中国は産業や地区をベースに炭素排出のモニタリング、試算や審査の制度を徐々に確立することになる。それに伴って、中国もまた「全ライフサイクル」モデルへの適時移行を進めて、炭素貿易障壁に対する国内サプライヤーの対応能力を高めることが必要になろう。

(経済参考報 10月29日)