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中国
【省エネ・環境】

炭素税課税のGDP成長率に対する影響は0.8%以下に止まる (15/06/12)
2015/6/22
中国【省エネ・環境】

 国際低炭素経済研究所が6月11日に発表した《中国低炭素経済発展報告(2015)》によると、短期的に見て、炭素税とエネルギー税の課税が生産コストの上昇を引き起こし、GDPの低下につながることは間違いないが、GDP成長率に対する影響が0.8%を超えることはなく、受け入れ可能なレベルである。なお、国際低炭素経済研究所は対外経済貿易大学と日本の名古屋大学が共同で創設した。

 今回発表されたレポートの中で、中国科学院科技政策管理科学研究所の劉宇副研究員など専門家は、CGEモデルを用いて炭素税と環境税の効果及び経済成長への影響についてシミュレーションを行った。環境保護部が公布した《火力発電所大気汚染物排出標準》が中国のマクロ経済と排出に対する影響について行ったシミュレーション結果によると、同標準はマクロ経済に比較的大きい影響を与え、GDP成長率を1.25%押し下げ、火力発電事業の生産を3.99%押し下げるが、一方ではエネルギー多消費産業の生産を押し下げて、省エネ・排出削減に効果を上げることが出来る。

 また、中国科学院科技政策管理科学研究所の鄒楽楽副研究員と名古屋大学の薛進軍教授はCGEモデルを用いてエネルギー税と環境税の機能についてシミュレーションを行い、その結果、長期的にエネルギー税と炭素税によってエネルギー消費と応分のCO2排出を引き下げることが可能であり、中国経済発展のポテンシャルを引き出すことが出来る。

 今回のレポートの副総括を務めた国家発展改革委員会能源研究所の戴彦徳副所長を初め専門家は中国のエネルギー発展ロードマップについての種々のシナリオ分析を行った。戴彦徳副所長等が示した見方によると、中国は2020年頃に石炭消費のピークに達し、2025〜2030年に炭素排出のピークを実現し、2035年頃にエネルギーのピークを実現する。また、今回の研究から、エネルギー構造の調整とエネルギー強度がピーク目標を実現する上で最も有効な政策手段であり、ピーク時期の前倒しがGDPと雇用に比較的大きな影響を及ぼすことが分かった。

 中国科学院科技政策研究所の王毅所長等はシナリオ分析の手法を用いて、種々の政策に基づくシミュレーションを行ない、中国の主要ピーク値を段階的に実現することが可能であるとの見方を示した。今後5〜10年内は主要エネルギーと汚染集約型産業がピークに達し、産業構造の変化と構造的省エネの寄与率の向上を実現する。その後、10〜20年で主要資源の消費と汚染物排出のピークを実現する。そして、2030年頃には炭素排出のピークに達する。専門家は「中国の炭素排出ピークの実現は総合コストによって決まる。中国固有のエネルギー賦存と産業経済構造のため、ピークを前倒しで実現するためには比較的大きな代償を払うことが必要になり、困難な選択に直面する」と指摘する。

 今回のレポートは、中国が2016年に全国統一の炭素市場を確立すると、世界最大の炭素排出権取引市場になるとの予想を示している。専門家は、排出削減政策の策定に当たり、政府は空間的特性を十分考慮し、地域発展の格差是正と産業配置の最適化に注力して、排出削減コストの最小化と地域的な炭素排出のバランスを実現すべきであると提言した。
 
 (新華網 6月12日)