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【エネルギー全般・政治経済】

中国 燃油車販売禁止のタイムスケジュールが議論を誘発 (17/09/11)
2017/9/11
中国【エネルギー全般・政治経済】

 9月9日、「2017中国自動車産業発展(TEDA)国際フォーラム」において、工業情報化部の辛国斌副部長は、工業情報化部が従来型エネルギー車の生産と販売を停止するタームスケジュールについて関連研究を開始したことを明らかにした。工業情報化部が燃油車の販売禁止を表明するのは今回が初めてになる。しかしながら、燃油車の販売禁止と新エネ車の全面的発展はシステマティックなプロジェクトになり、小さからぬ抵抗力にも直面し、燃油車販売の全面禁止が10年以内に実現する可能性は低い。

 国際化の流れとエネルギー・環境保護の要請

 中国は燃油車の販売禁止をタイムスケージュールに正式に上げることになる。辛国斌副部長によると、一部の諸国はすでに従来型エネルギー自動車の生産と販売を停止するタイムスケジュールを策定しており、現在、工業情報化部も関連研究を開始して、関係部門ととともに中国のタイムスケジュールを策定することになる。こうした措置は必然的に中国の自動車産業の発展環境と原動力に深刻な変化をもたらす。

 2015年以降、オランダを筆頭に一部の欧州諸国は国際ZEV(ゼロエミッション自動車)アライアンスに加盟し、販売する新車を2050年までに全て新エネ車にすることを公約した。その後、ノルウェー、フランス、ドイツ、英国等も燃油車販売禁止計画を打ち出した。販売禁止のタイムスケジュールはいずれも2025〜2040年である。

 自動車評論家の凌然氏によると、数年後には中国はエネルギーの枯渇に直面することになり、また、自動車排ガスも大気環境に深刻な汚染をもたらす。そのため、燃油車の販売は世界的な流れになり、中国も必然的に追随する。

 辛国斌副部長によると、中国は今や世界最大の新エネ車生産・販売市場になっている。2016年の中国の新エネ車生産・販売台数は50万台を突破し、累計普及台数は100万台を超え、世界の50%を占めた。新エネ車の完成車の研究開発水準は絶えず上昇し、中国ブランドの市場認知度も大幅に上昇し、一部の細分化マーケットでは国際ブランドと同じ土俵で競争できるようになった。

 今から2025年までは、自動車産業の変革が最も熾烈な数年間になる。従来型自動車の省エネ・排出削減の要求がますます高まり、新エネ車の発展が技術要件をますます高めることになる。スマートコネクテッドカーは自動車産業全体に巨大な影響を及ぼす。そのため、辛国斌副部長と専門家は、中国企業に対し、こうした流れを深く認識し、戦略を速やかに調整し、発展計画を明確にして、新しい情勢のチャレンジに適応し、もって中国の自動車大国から自動車強国への転換に助力すべきであると提言している。

 国家発展改革委員会産業協調司の呉衛処長(課長)は次のように表明した。現在、国家スマートカーイノベーション発展戦略の起草が進められており、戦略の策定を通して、未来の自動車戦略の方向、保障措置、重点任務を明確にすることになる。同時に、当面の行動計画を提示し、ロードマップとタイムスケジュールを確定して、イノベーション発展戦略が可及的速やかに始動され、整然と実施されるよう確保する。

 生産・販売の現状及び技術とインフラの難題

 しかしながら、燃油車の全面的販売禁止は一挙に出来るものではない。全国乗用車市場情報聯会の崔東樹事務局長の見方によると、燃油車の販売禁止は当面の流れにはなるが、システマティックなプロジェクトであり、そのプロセスには長い時間がかかる。一刀両断には行かないだろう。

 また、自動車市場の専門家である顔景輝氏も中国が燃油車の販売禁止を10年以内に実現する可能性は低いと指摘する。顔景輝氏によると、中国は自動車大国であるが、自動車強国ではなく、今のところ燃油車が中心である。燃油車産業は基幹産業であり、新エネ車産業に完全に切り替わるまでは、2億台近くの自動車のアフターサービスを適正に行わなければならない。そのため、新エネ車を提唱、支援するに当たっては、漸進的に移行した方が良い。

 業界関係者の見方によると、国内外の発展動向を見る限り、従来型燃油車の時代が終了することは時間の問題であるが、国内の従来型燃油車の販売停止時期が急速に到来することはない。特に中国のような面積が大きく、社会消費層が多い国ではなおさらである。例えば、中国の新エネ車の充電インフラは建設が遅れてり、新エネ車に対して充電パイルの比率は明らかに不足している。その上、公共充電施設の建設地点と消費者の充電が集中するエリアにずれがあったり、充電施設の間の連携や融通性が低いなどの原因のため、一部の完成済み充電施設は利用率が低く、充電サービスの不足をさらに激化させている。そのため、1つの産業から別の産業への移行においては解決しなければならない多くの問題が立ちはだかることになる。

 2016年末時点で中国の自動車保有台数は2億台近くに上り、巨大な保有量は深刻な資源・エネルギー圧力と環境圧力をもたらしている。凌然氏によると、中国は2030年に炭素排出のピークに達することを国際社会に公約しているが、現行の自動車産業の発展スピードでは、この目標を達成することは極めて難しく、自動車産業全体が大きな努力を払うことが必要である。中国の発展状況を勘案すると、10年以内に燃油車の全面的販売禁止を実現することは不可能である。中国には多くの合弁自動車企業があるが、生産しているのは全て燃油車である。そのため、中国は順序を立てて漸進的に発展し、路線を適切に選定して、国際動向に順応しながら、急速かつ安定的に発展しなければならない。

 中国の自動車企業のイノベーション能力は長足の進歩を遂げたものの、国際先進水準に比べると小さからぬ格差があり、コアテクノロジーの大多数は外国によって制されている。また、独自ブランド開発の担当者によると、独自ブランドの開発はエンジン開発から着手するのが王道であるが、エンジンの研究開発にはEVよりも多くの資金と人員を要する。従来型燃油車の販売を近い将来禁止すれば、多国籍ブランドから技術面で引き続き圧迫を受け、同時に近年占拠した市場シェアも手を拱いたまま相手に譲ることになる。

 新エネ車の成否

 燃油車の全面的販売禁止を実現できるかどうかは、新エネ車の発展が鍵になる。中国は2015年から世界最大の新エネ車市場に躍進した。中国自動車工業協会の統計によると、2016年の中国の新エネ車販売量は前年比53%増加して50.7万台に達し、特にピュアEV車は65.1%増加して40.9万台に達した。ピュアEV乗用車の販売量に到っては、75.1%の大幅増を実現して25.7万台に上った。今年に入ってからも1〜7月の中国の新エネ車累計販売量は25.1万台であり、前年同期比21.5%に上っている。うち乗用車の販売量は合計20.6万台を超え、新エネ車総販売量の83%を占める。

 燃油車販売の全面的禁止は、燃油車のない時代が直ちに到来することを意味する。これは従来型自動車産業にとっては大きな革命になるが、新エネ車産業にとっても巨大な圧力である。アナリストによると、新エネ車は従来型燃油車に取って代わるだけでなく、電池、モーター、電子制御システム等の面で品質を向上することが求められる。2016年の中国の新エネ車累計台数は100万台を超えているが、燃油車保有量の2億台との間には極めて大きな格差がある。

 顔景輝氏によると、現実をはっきりと見定めることが必要である。新エネ車はイノベーション過程にあり、完全な成熟には程遠く、短期間で燃油車産業に取って代わることは不可能である。国外でも新エネ車は新しいマーケットであり、中国よりも進んではいるものの、燃油車産業に比べると格差は小さい。

 中国の自動車産業は長年の努力を経て、すでに整った産業体系を形成しており、一部分野の技術水準は外国との格差はすでに大きくはなく、海外の先進諸国と同じ土俵で競争する基礎と条件が備わっている。但し、起点が同じであっても、同時に終点に到達するわけではない。新しい流れを直視し、発展のボトルネックと不足部分から着手して、積極的に行動し、原動力を発揮しなければならない。

 その他にも、財政部経済建設司の宋秋玲副司長は9月9日、新エネ車に対して長期的に補助金を適用すると、企業の闇雲な拡張を安易に招き、生産能力過剰を形成することになると指摘した。補助金後退政策はすでに明確になっており、今後は新エネ車ポイント政策を加速して、補助金政策撤廃後の新エネ車支援を確保することになる。アナリストによると、補助金の後退が進む中で、国内の自動車企業は販売量を確保するため、技術革新を進めることが求められる。このことは国内自動車企業にとって試金石になるとともに、中国が燃油車の全面販売禁止政策の実行の可否を決定することになる。

 (人民網 9月11日)