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中国 新エネ車補助金削減が車載電池企業を圧迫 (18/04/03)
2018/4/3
中国【新エネルギー】

 新エネ車補助金の削減が持続的に進められ、新エネ車産業チェーンの川上にある車載電池企業を圧迫し、BYDや沃特瑪等の車載電池企業は大きなチャレンジに直面している。

 BYDの発表によると、新エネ車補助金削減の影響で2018年1〜3月の純利益は5,000万元〜1.5億元に止まり、75.24〜91.75%の減益になると予想される。

 因みに同社の2017年の純益は40.66億元、前年比19.51%減であった。新エネ車補助金が年々引き下げられていることでBYDの純益も低下傾向を示している。BYDは昨年の新エネ車販売台数で世界第1位になったが、国内の車載電池販売では第1位から第2位に下がった。

 昨年の国内の車載電池第3位の沃特瑪も状況は楽観できない。沃特瑪の上場公司である堅瑞沃能は4月1日、支払手形と銀行借入金19.98億元の返済が遅れていると発表した。沃特瑪の鍾孟光副総裁は4月3日、第一財経日報の取材に対し、車載電池企業はいずれも圧迫を受けていると指摘し、同社の債務返済の滞りの原因について、急過ぎる拡大によりキャッシュフローに問題が生じたためでにあるとした。

 新エネ車補助金政策に推進される形で中国の新エネ車は2013年以降急速に成長し、年間販売台数は1.76万台から2017年には77.7万台に拡大した。そして、新エネ車の「心臓」に当たる車載電池の販売量も右肩上がりに上昇した。高工産業研究院(GGII)の統計によると、2017年の中国の車載電池出荷量は44.5GWh、前年比44%増加した。寧徳時代(CATL)、BYD、沃特瑪は車載電池販売量上位3社であり、CATLは11.84GWh、BYDは7.2GWh、沃特瑪は5.5GWhに上った。CATLは昨年、国内販売量でBYDを抜いただけでなく、パナソニックも抜いて車載電池販売量世界第1位になった。

 しかしながら、GGIIの羅煥塔院長によると、2017年に電気自動車と車載電池は急速な成長を持続したものの、補助金削減の影響を受けて、車載電池価格は大幅に下がり、2017年末の平均価格は年初に比べ20〜25%下がった。

 2017年、政府は新エネ乗用車補助金基準を2016年比で20%引き下げ、新エネバスについては40%引き下げた。また、補助金交付の基準も引き上げられ、補助金は車載電池のエネルギー密度、航続距離、省石油率、3万キロの走行実績要件といった指標に直接リンクすることになった。また、補助金交付方式も変更され、事前給付方式から事後決算方式に変わった。

 新エネ車補助金政策の調整を受けて、新エネ車メーカーは次々と経営コスト圧力を車載電池に転嫁し、そのため車載電池は川上と川下の両方から圧迫を受けることになった。すなわち、川上からリチウム等の原材料価格の高騰、川下からは新エネ車企業の電池価格引き下げ要求である。これを受けて、沃特瑪は拡張ペースを緩めることなく、逆に規模の拡大によって利益を確保し、補助金引き下げによる損失を補填しようと図った。しかしながら、3万キロの走行実績要件のため、沃特瑪の完成車企業からの販売代金回収が遅くなった。鍾孟光副総裁によると、新エネ車バスの3万キロの走行はすぐに達成できるが、トラックは3万キロの走行を達成して完成車企業が補助金を申請するには1年半かかる。そのため、沃特瑪の代金回収も大幅に遅れ、同社のキャッシュフローに問題が生じた。

 商用車向けが中心である沃特瑪に対し、新エネ乗用車と商用車のいずれにも電池を供給しているBYDとCATLへの衝撃は相対的に小さかったものの、やはり大きな流れによる影響は避け難い。BYDの2018年第1四半期の業績は、新エネ車補助金削減からの影響を受け、特にEVバスの収益性は大幅に下がり、グループ全体の収益に大きな圧力をもたらした。BYDは補助金削減の影響を相殺するため、研究開発を強化するとともに新車種のリリースをスピードアップする。BYDの今年の新エネ車販売目標は20万台であり、新エネ車の販売量を増やすことでリチウム電池の成長を牽引する。また、BYDは他社への車載電池の供給も速やかに進める。

 BMW、吉利、北汽、宇通など多数の新エネ車メーカーに車載電池を供給しているCATLは目下、新規市場の開拓を加速しており、最近、フォルクスワーゲンのサプライチェーンへの参入を果たした。フォルクスワーゲンが欧州及び中国で結んだ車載電池契約は200億ユーロに達し、同社にとって中国における車載電池の最大のパートナーがCATLである。4月4日にIPOを実施するCATLは資本市場からの助けを借りて車載電池の市場シェア争奪を急ぐことになる。

 GGIIの羅煥塔院長の分析によると、2017年末時点の中国の車載電池総生産能力は135GWh、有効生産能力は110GWhであるが、全国の生産能力利用率はわずか40%である。2018年は生産能力利用率はさらに下がり、ミドル・ローエンドの生産能力の淘汰と統廃合が進むことになる。

 また、2018年には新エネ車補助金がさらに縮小される。2018年2月12日から2018年6月11日を移行期間として、当該期間中にナンバープレートの交付された新エネ乗用車と新エネバスに対する補助金は2017年の補助金基準の7割になり、新エネトラックと新エネ専用車は2017年の4割になる。さらに、新エネ車応用普及補助金は2020年を最後に打ち切られる。

 GGIIの羅煥塔院長は、向こう3〜5年、新エネ車は依然としてリチウム電池生産量の増加を牽引する主要な原動力であり続けるものの、そこには多くの問題が付きまとうと指摘し、リチウム電池産業には大きな展望が広がっているが、前途は紆余曲折があり、企業はコアテクノロジーの向上を絶えず進めなければならないとの見方を示した。

 (第一財経日報 4月3日)