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【石油・天然ガス】

米中貿易摩擦が両国の中長期的LNG貿易協力に及ぼす影響 (18/11/05)
2018/11/5
中国【石油・天然ガス】

 中国は2016年以来、国内の天然ガス需要を賄うためLNG輸入を急速に拡大し、一方、米国の天然ガス生産量とLNG輸出能力は大幅に増えた。両国のLNG貿易における相互補完性は高い。しかしながら、当面、米中貿易情勢はの緊張が続き、政策環境と貿易環境には大きな不確実性が付きまとう。米中両国の中長期的LNG貿易協力が直面するチャンスとチャレンジを徹底的に分析することは極めて重要になる。

 2017年、中国のLNG輸入量は3,813万トンに達し、韓国を抜いて世界第2位のLNG輸入国になった。同じ時期、米国の天然ガス生産量は急速に増加し、LNG輸出事業のキャパシティも絶えず上昇、既存及び建設中のLNG年産能力は約7,200万トンに達している。米国は2023年には世界3大LNG輸出国になると見込まれる。米中両国のLNG貿易協力のポテンシャルは巨大である。

 しかしながら、2018年4月以来、米中貿易摩擦が絶えずエスカレートしている。米国は中国からの輸入商品に度々追加関税を課し、一方、中国は応分の対抗措置を取り、特に米国から輸入するLNGに対して、9月24日から10%の追加関税を課した。

 米国のLNG資源は中長期的にグローバル天然ガス市場とLNG市場への販売においていずれも種々の限界があることは分かっている。中国は今後天然ガス需要の伸びが世界で最も高い国になり、米国のLNG資源の中長期的な潜在的買主になる。中国が調印したもしくは将来調印する可能性がある米国とのLNG長期契約状況に基づき分析すると、もし両国の貿易摩擦が緩和された場合、両国のLNG貿易協力は拡大し、中国にとっては天然ガス需要を賄い、輸入先の多元化を実現する上で助けになる。一方、米国にとっても投資と雇用を拡大し、天然ガスの余剰生産能力を消化する上で助けになる。これに対し、米中貿易摩擦が過度に長く持続した場合、米中両国は中長期的なLNG貿易協力のウィンドウ・ピリオドを逸することになる。

 貿易摩擦緩和シナリオ

 米国の既存及び建設中のLNG生産能力(約7,200万トン/年)の殆どは長期LNG売買契約によって販売されている。そのため、貿易摩擦緩和シナリオの下では、中国が米国から輸入するLNGは、2023年までの主に長期LNG契約とスポット調達によるものになる。

 国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、2023年頃には中国のLNG需要は2017年に比べ約3,000万トン増える。米国のLNG生産能力と新規輸出事業の販売状況と合わせて考えると、米国企業が競争力を備えしかも信頼性と敏活性の高いLNG資源を提供する場合、中国企業が米国のLNG輸出事業と新たに長期契約を結ぶLNG資源量は約500〜1,000万トン/年になり、米国の新規LNG輸出事業の建設2〜3件に波及して、少なくとも50〜100億ドルの投資を喚起する。2025年以降になると、米国の中長期契約によるLNG輸出額は約20〜50億ドル増え、対中貿易赤字の削減を助ける。

 貿易摩擦持続シナリオ

 当面の情勢を緩和することが出来ず、米中貿易摩擦が2020年頃まで持続した場合、中国側企業はビジネス上の見地から追加の税負担を避けるため、米国以外の国及び地区から長期LNG資源の調達を増やすことになる。例えば、2018年9月には中国石油天然ガス(CNPC)はカタールガスと年間340万トンの長期LNG売買契約を結んだ。

 そうなれば、米中間のLNG貿易協力の余地は大幅に縮小し、中国企業が米国のLNG輸出事業と長期LNG売買契約を結ぶ可能性は低くなる。米国の一部のLNG輸出事業は市場を確保できないまま、投資の最終決定を下すことが困難になり、LNG生産能力計画の実現も困難になるだろう。

 貿易摩擦持続シナリオの下では、中国のLNG需要は中長期的にアフリカ諸国、パプアニューギニア、カタール、ロシアやカナダなど米国以外の国及び地区からの供給によって賄うことになろう。米中両国の企業は中長期的なLNG貿易協力を展開するウィンドウ・ピリオド逸する公算である。米国は中国の天然ガス市場の急速な発展時期を逃し、LNG輸出能力の規模拡大にも大きな影響が及ぶだろう。

 総じて言えば、天然ガスをめぐって米中両国の相互補完性は高く、LNG貿易協力を拡大することが出来れば、中国の天然ガス需要を賄い、中国の天然ガス源の多元化を促進するだけでなく、米国が天然ガス生産能力を消化することを助け、事業の投資と建設に波及し、国内の雇用拡大や経済発展の促進にもつながる。

 米中両国のLNG産業の発展にとって今が重要なチャンスにある。もし両国が貿易摩擦のせいでLNG貿易協力のウィンドウ・ピリオドを逃すことになれば、米国のLNG輸出事業の多くは市場を確保できないために投資と建設を進めることが難しくなる。両国の貿易摩擦が長く続けば続くほど、米中のLNG貿易協力の拡大にとっては不利になる。米中両国の企業が互恵とウィン・ウィンのLNG貿易及び投資協力を展開するには、両国政府が向き合って矛盾を解消し、安定的で良好な政策環境を構築するしかない。

 (国際石油網 11月5日)

 注…本記事は中国の一部専門家の見方を提示したものであり、エイジアム研究所の見解を示すものではありません。