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【石油・天然ガス】

【論説】石油消費抑制 中国にとって重要な意義 (19/02/18)
2019/2/18
中国【石油・天然ガス】

石油消費抑制 中国にとって重要な意義

傅成玉(中国石化集団元会長・石油抑制事業核心組組長)

 「石油抑制」は人類と地球にとって極めて重要な意義を有している。なぜなら人類はすでに全く新しい時代に入っているからである。今や人類の生存は環境と気候変動の脅威にさらされ、化石エネルギーは環境と気候変動に対して最も大きな影響を及ぼすファクターの1つになっている。

 旧来の時代遅れの生産と発展方式に起因する環境の人類に対する傷害により、人類の持続可能な生存と発展はチャレンジを受けている。それゆえ、化石エネルギーの抑制は特に中国にとって特殊な意義を有するとともに、全人類にとっても並々ならぬ意義を有する。

 予想を超える再生可能エネルギー

 石油消費の抑制のためには積極的かつ決然たる措置を講じることは不可欠である。

 中国政府はこうした面ですでに行動を起こしている。ここ数年、石炭に対する抑制は極めて優れた成果を上げ、加えて、石油消費に対する抑制でも応分の措置を講じている。

 中国政府は「パリ協定」において、2030年までにはCO2排出のピークに達し、それ以降は徐々に排出を減らすことを公約している。中国政府が取ってきた効果的な行動によって、炭素排出ピークは予定よりも早く到来するに違いない。特に石油消費抑制の面で積極的な措置を取っていることで、「パリ協定」の公約をより良く実現することが出来る。

 試算によると、中国の石油消費のピーク値は7.2億トンになる。もし石油消費を抑制しなければ、人類の未来の発展は環境と気候変動の面で持続不可能になり、生存空間の面でも持続不可能になるに違いない。

 将来、世界には極めて大きな変化が発生するが、その1つに工業化する国がますます多くなることが挙げられる。工業化は相当程度において資源の大量消費と環境の深刻な汚染に直結する。そのため、中国は第16回共産党代表大会において「新型工業化」の道を歩むことを打ち出した。すなわち、技術の含有量が高く、経済収益に優れ、資源消費が低く、環境汚染が少なく、資源を十分に生かせる工業化の道筋である。

 もし13億の中国人が工業化に突き進み、13億人超のインドも工業化を進め、さらに中東諸国、アフリカ諸国、南米諸国が続くとなれば、世界の石油は足りなくなり、その上もっと大きな災難をもたらすことになる。従って、「新型工業化」の道を歩むことこそが中国が取るべき持続可能な発展の新たな方式なのである。

 当面のエネルギー消費動向に基づくなら、たとえ米国のシェールガスとシェールオイルが優れた発展を遂げるにしても、2050年までに世界の人口が20〜30億人増えることを勘案すると、もし旧来の工業化発展方式に従う場合、莫大なエネルギーを供給することは不可能になる。新型工業化の道を歩み、再生可能エネルギーを発展させることが必然の道筋である。

 この数年、技術の進歩により、太陽光発電と風力発電のコストは大幅に下がった。

 IREA(International Renewable Energy Agency)の予測によると、洋上風力発電や陸上風力発電であれ、太陽光発電や太陽熱発電であれ、2020年には末端のコストは従来型化石エネルギーに近づく。2020年以降は、こうした技術はさらなるブレークスルーを遂げるに違いない。

 例えば、2018年末に三峡集団が青海省で稼動した太陽光発電事業の場合、売電価格は0.31元/kWhであり、一方、同地の石炭火力発電の脱硫後の売電価格は0.32元/kWhである。つまり、再生可能エネルギーは極めて優れたコストパフォーマンスが備わっているのである。

 5〜10年もすれば、再生可能エネルギーは予想を超える大規模な発展を遂げるに違ない。再生可能エネルギーはエネルギー消費増加の絶対的な主役になるだろう。一方、化石エネルギーの消費量は大幅に下がる。石油代替は短期間で比較的大きな効果を上げることが出来よう。

 中国はエネルギー自給を目指せ

 石油消費抑制のもう1つの重要な意義として、もし発展途上国と先進国がグリーン・低炭素を発展戦略とした場合、国際エネルギーと地政学の勢力図が塗り替えられることが挙げられる。2030年以降、エネルギー消費総量に占める新エネルギー消費のシェアが30%になれば、勢力図にも重大な変化が発生することは間違いない。

 エネルギー安全保障問題と中国のエネルギー自給問題いついてはいずれも直ちに慎重に考慮しなければならない。中国は石油の60〜70%、場合によっては70〜80%は対外依存ではなく、国内で賄えるようにしなければならない。そのためには計画を進めて措置を講じることが必要である。

 現在、中国には十分に効果を発揮することが可能な大きな優位がある。

 第1に、エネルギー構造を一変させるにはクリーン・エネルギーを中心にし、天然ガスの発展に力を入れなければならない。中国のシェールガスの発展ポテンシャルは想像をはるかに超える。それゆえ、技術進歩に注力する必要がある。

 第2に、エネルギー効率の向上を省資源の第一の要諦にしなければならない。中国のエネルギー消費は先進国の3倍であり、そのため、中国政府から民間に到るまで、エネルギー効率の向上を第一の要諦にしなければならない。

 中国の産業の多くは技術標準が低く、エネルギー消費が極めて大きい。しかし、工業インターネット、ビッグデータ、スマートマニファクチャリングなど新しい技術領域の進歩に伴って、エネルギー効率を大幅に高め、エネルギー消費を大幅に下げることは可能である。

 その他にも、再生可能エネルギーとクリーン・エネルギーの発展を強力に推進しなければならない。特に電気自動車には力を入れなければならない。実際、中国は自動車や建築であれ、産業、技術、エネルギーや政策等の側面であれ、いずれにおいても総合計画を策定し、改めて統一的に実施すべきである。

 今や政府の機能はますます明確になっている。もし依然として古い観念をもって新しい経済規模や新しい経済発展方式に対応するなら、融通が利かなくなる。企業の発展においても同様である。昨日の発展の考え方に従って明日の事柄を考えるなら、必ず挫折し、大きな障害に直面することになる。

 中国はエネルギー自給もしくはエネルギーの基本的自給に立脚しなければならない。その実現可能性については、多くの人は信じられないかもしれない。しかし、その可能性は極めて高いと思う。多くの困難が付きまとうのは確かであるが、実現するチャンスはある。今重要なことは実現できるか出来ないかではなく、視野を広げて、この一点を見据えることが出来るかどうかにある。

 それゆえ、政府は各クラスの企業、あらゆる産業に対し、未来を見据え、未来の人類の新たな生存方式と生活方式を用いて現在の生産方式の変革、技術の変革及び企業発展モデルの変革を推進するよう提言しなければならない。
 
 (中国科学報 2月18日)