1. HOME
  2. 中国 【石炭】

中国
【石炭】

中国の豪州炭輸入制限 米国炭が豪州炭に代わり中国へ輸出されるのか (19/03/27)
2019/3/27
中国【石炭】

 米中貿易協議が成立して、石炭も含む米国の商品の対中輸出が増えることになれば、豪州炭は中国の輸入炭市場からシェアを失うことになりかねない。このことにオーストラリア政府は懸念を強めている。

 もし来月にでも米中貿易協議が成れば、中国が米国ウェストバージニア州から輸入する石炭は大幅に増加する。ウェストバージニア州はトランプ大統領の大票田であり、トランプは同州の石炭産業の復興を公約している。

 この2ヵ月、中国は港湾において豪州炭の通関を制限している。また、中国はカナダ最大の菜種油輸出業者の許可を撤回した。これらのことは、中国当局が米中間のエネルギーと農産物供給協議のための障害を取り除いているのではないかとの憶測を呼んでいる。

 「石炭輸出は米中貿易交渉の一部になる可能性が極めて高い。特に両国間で貿易赤字のバランスを取る側面では」とU.S.-China Clean Energy Research CenterのJames Wood所長は指摘する。

 James Wood所長によると、ウェストバージニア州で産出されるAppalachia原料炭は価格がリーズナブルであり、品質は豪クイーンズランドの石炭と同等である。

 もっとも、オーストラリアのSimon Birmingham貿易相は、「今後も資源の品質上の優位と競争力を発揮して、他国との公平な競争を進める」と表明する。

 中国能源投資集団はウェストバージニア州で投資と輸出協力を模索しており、2018年には837億ドル(5,588.9億元)を同州に投資した。

 その一方、中国能源投資集団はオーストラリアのニューサウスウェールズ州リバプール平原に新たに炭鉱を建設することも計画している。

 米国最大の石炭生産企業の1つであるArch Coalは先月、ウェストバージニア州に新たに炭鉱を建設すると発表した。高品質の原料炭を年間300万トン生産して、アジア市場に輸出する。Arch Coalはすでの世界の主な鉄鋼企業との間で協力交渉を進めている。

 戦略国際問題研究所(CSIS)によると、2017年にオーストラリアのクイーンズランド州の炭鉱が熱帯モンスーンの被害を受けて以来、中国のバイヤーは豪州炭から米国炭へのシフトを開始した。2017年の米国炭輸出量は対前年比60%の増加になり、うち320万トンが中国へ輸出された。

 米国の対中貿易赤字を減らすため、中国は大手鉄鋼企業に対し米国から原料炭輸入を増やすよう求めている。

 しかしながら、米中貿易戦争の継続により、中国は米国から輸入する石炭に25%も報復関税を課し、そのため、大手鉄鋼企業の米国炭輸入拡大措置は実施されていない。

 米国のSteven Mnuchin財務長官は、米国は中国へのエネルギー輸出によって400〜500億元の輸出額を稼げるとしている。但し、中国商務部国際貿易経済協力研究所の梅新宇研究員は、米中新冷戦を念頭に、米国からのエネルギー輸入額は250億ドルに止まる公算であるとしている。

 また、James Wood氏によると、中国にとっては、政治的要因の他にもトン当たりのCIF価格が石炭輸入の重要なスタンダードになる。また、もう1つの重要な要素として、長期継続供給契約の能力によって鉄鋼企業の経営が供給中断の影響を受けないよう確保することも挙げられる。

 Wood Mackenzieのアナリストは、中国政府が貿易協議の一環として25%の追加関税を撤廃したとしても、米国は中国の原料炭需要の全てを賄うことは出来ないと指摘し、「オーストラリアは中国へ月間300〜400万トンの石炭を輸出しているが、米国の1年間の輸出量はわずか300万トン。米国にはオーストラリアに取って代わるほどの石炭生産量はないと考えられる」「世界のどの国であれ、石炭の数量と品質で豪州炭に取って代わることは不可能だ」と言う。

 2018年のオーストラリアの冶金用石炭輸出総額のうち中国への輸出が23%を占め、一般炭輸出額の中では中国が19%を占めた。

 上海金属取引所は2月、豪州炭とモンゴル炭の供給が中断された場合、米国の原料炭で代替しようにも、品質は豪州炭に及ばないと指摘した。

 (中国能源網 3月27日)