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中国
【エネルギー全般・政治経済】

米中貿易戦争下におけるエネルギー市場の行方 (19/05/28)
2019/5/28
中国【エネルギー全般・政治経済】

 2019年5月5日、米国トランプ大統領は、5月10日より追加関税対象の中国からの輸入品を従来の500億ドルから2,000億ドルに広げ、税率を10%から25%に引き上げると宣言した。一方、中国国務院関税税則委員会は5月13日、米国原産の輸入品600億ドル相当に対し5〜25%の追加関税を課すと宣言し、米中貿易戦争は改めて白熱化した。このように圧力を高めている貿易戦争はエネルギー市場に対してどのような影響を及ぼすのだろうか。

 天然ガス

 米国エネルギー長官Rick Perryは以前、LNGも含む米国の化石燃料輸出の急速な拡大は中国との貿易交渉において梃子としての作用を発揮すると指摘した。

 米国は世界で最も急速にLNG輸出を拡大させており、一方、中国は世界で最も急速にLNG輸入を増やしている。

 しかるに、貿易戦争の重圧の下で、中国は天然ガス輸入の重心をより一層ロシアにシフトしている。中国とロシアは天然ガスパイプライン西線をめぐる協力について交渉中であり、この西線が稼動すると、ロシアは中国の最大の天然ガス輸入先になる。

 中国の関税引き上げは米国の天然ガスを威嚇するに十分であり、米中間の天然ガスの発展もしばらく停滞することになろう。

 レアアース

 レアアースは中国にとってキングカードであり、米中関係が緊張する中で、レアアースは貿易戦争において重要な手札になる。

 中国は世界のレアアース埋蔵量の37%を占め、中国と同等の競争力を有するレアアース供給国は殆どない。レアアースの採掘と精錬は難しく、コストが高い上で、汚染が深刻である。中国はレアアース精錬量が世界最大であり、米国の輸入量の8割を供給している(2014〜2017年)。

 5月、米国議会上院は議案を提出して、本国のレアアースサプライヤーの発展を奨励することにした。また、リサイクルもレアアースの潜在的供給源になり、ネブラスカ州のRare Earth Salts社は廃棄蛍光灯からレアアースの回収を行っている。レアアースは蛍光灯の成分の20%を占めるが、レアアースの対中依存を根本的に変えることは不可能である。

 中国エネルギー市場は大した影響を受けない

 その他のエネルギーの面では中国が受ける影響は余り大きなものにならない。

 例えば、電力設備については、中国の電力技術と設備製造は日進月歩であり、事業建設に影響が及ぶことはない。

 太陽光発電については、米国はかつては中国のPV製品の輸出先第2位であったが、米国は中国PV製品に対する調査と追加関税を行ったため、中国のPV産業にとって米国市場の重要性は年々低下している。中国太陽光発電協会の統計によると、2018年から現在まで中国から米国へ直接輸出されたPV製品はほぼゼロである。

 2018年中頃、米国は追加関税リストにPVインバーターやマイクロインバータのソーラーパネルを入れたが、中国のPVインバーターの主要輸出先は米国ではなく、また、海外工場を設けることで米国の関税障壁を回避することが可能になっている。

 (新能源網 5月28日)