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【石炭】

中国 石炭輸入制限の効果は期待はずれ 沿海部の石炭市況は依然低迷 (19/12/12)
2019/12/12
中国【石炭】

 11月以降、中国の大多数の港湾は年末まで輸入炭の通関を制限することになり、一部の港湾は荷揚げと通関を全て停止するなど強力な制限措置を取っている。沿海地区は輸入炭に対する依存度が高く、海上から流入する石炭の25%前後を占めている。常識的に判断すると、輸入政策の大幅な引き締めにより、需要は国内炭に向かい、市況の好転につながるはずである。

 しかしながら、石炭輸入制限の実施から1ヵ月、体感効果は際立ったものではない。中国の石炭輸入は10月期の2,596万トンから、11月は2,078万トンになったが、前年同月比では163万トンの増加になった。1〜11月の中国の石炭輸入は2億9,929万トンにまで達し、早くも2018年の通年の水準を超え、前年同期比で10.2%の増加になった。このペースだと、2019年の通年の石炭輸入は3.18億トンに達し、2018年を3,800万トン上回ることになる。意外なことに、11月から現在に到るまで、国内炭市況には顕著な好転は見られない。沿海の石炭は需給ともに低迷し、港湾石炭価格は上昇力に乏しい。

 その理由として、以下の4点が考えられる。

  1. 制限措置の前から発電所は石炭の過剰在庫を抱えていた。11月初頭の全国重点発電企業の石炭在庫は前年同月よりも580万トン多い9,707万トンに上昇していた。沿海発電大手6社の石炭在庫は1,669万トンで前年同月より21万トン増加していた。冬入り前において上海、広州、長江沿い等の荷揚げ港の在庫も前年同期の水準を上回っていた。輸入制限措置が始まってから、各発電企業大手は自身の在庫を消化するのに積極的であり、国内炭需要の増加と市況の好転、価格の押し上げに対する効果は期待を下回った。
  2. 第1〜3四半期の石炭輸入が過剰であった。中国は2018年に石炭輸入を抑える政策を採り、まずまずの効果を上げた。2018年の石炭輸入は前年に比べわずか1,050万トンの増加に止まり、特に11月期は前年同月に比べ295万トン減少し、12月期は1,251万トン減少した。然るに、2019年は石炭輸入制限措置を取った後も影響は大きいものにはならなかった。国内炭市場が依然低迷しているのも、石炭輸入制限措置が昨年ほど強力なものでなかったことも原因の1つである。
  3. 石炭輸入枠が厳正に執行されていない。2018年末には2019年に石炭輸入枠を厳正に執行することが打ち出されていた。つまり、2019年の輸入量は2018年と大きな変わりはないということである。しかしながら、2019年の実際の輸入量は著しく大きくなり、特に第3四半期の輸入量は9,611万トンに達し、前年同期に比べ1,329万トンもの大幅増になった。今年11月と12月は沿海地区の大多数の主要発電企業は依然として輸入一般炭の買入入札を継続している。12月期も中国の石炭輸入は1,500〜1,800万トンになると予想される。
  4. 発電所はコスト引き下げのため輸入に前向きである。2020年から石炭火力発電のベンチマーク売電価格は「基準価格+上下変動価格」に改められる。工商業向け平均電力価格は、2020年中は当面引き上げられることはない。こうした政策は発電所の経営を困難なものにする。輸入炭は国内炭に比べ50〜100元/トン低いため、発電所は意識的に輸入炭の調達割合を高めて、調達コストを引き下げるとともに国内炭の長期契約交渉で主導権を勝ち取ろうとする。実際、12月に入ってから、神華の長期契約価格引き下げに伴い、市場炭価格は下落している。

 (中国能源網 12月12日)