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中国の火力発電設備過剰リスクが深刻化 石炭火力発電事業15件が撤回 (16/09/27)
2016/9/27
中国【電力】

 国家能源局は先頃、建設許認可の条件を具備していない石炭火力発電事業15件を撤回した。うち9件は5大発電集団である国電集団、大唐集団並びに華電集団の事業である。

 昨年以降、火力発電の設備過剰問題が突出し始めたが、今年も相変わらず火力発電設備規模の拡大が続いている。

 こうした傾向が続けば、今後数年で中国の石炭火力発電事業は現在の鉄鋼や石炭産業の二の舞になると国家能源局はすでに指摘していた。

 アナリストによると、火力発電の生産能力過剰がますます激化すると、競争力の弱い電力企業の多くが淘汰され、火力発電企業に倒産の波が押し寄せることになる。

 石炭火力発電事業15件が撤回

 9月23日、国家能源局は《建設許認可条件を具備しない一群の石炭火力発電事業の撤回に関する通達》を公布し、15件、合計1,240万kWの石炭火力発電事業を撤回した。これらの事業は、吉林、山西、山東、陝西、四川、江西、広東、広西、雲南の各省・自治区に分布している。

 15件のうち9件は、5大発電集団である国電集団、大唐集団並びに華電集団の事業である。撤回された事業が最も多いのは国電集団であり、合計5件、650万kWに上り、今回撤回された1,240万kWのうち52.4%を占めた。大唐集団は3件で190万kW、15.3%を占め、華電集団は1件、30万kW、2.4%を占めた。

 注意しなければならないのは、今回の石炭火力発電事業の撤回は始まりに過ぎないということである。

 国家能源局の通達は、各省・自治区・直轄市の発展改革委員会(能源局)に対し、許認可(建設)条件を具備しない石炭火力発電事業の撤回をさらに進め、国家能源局に直ちに報告するとともに社会に公表するよう求めている。

 今年4月、国家発展改革委員会と国家能源局は《石炭火力発電事業の老朽化生産能力淘汰の適正な実施に関する通達》《我が国の石炭火力発電の秩序ある発展の促進に関する通達》《石炭火力発電計画建設リスクアラームのメカニズム確立及び2019年石炭火力発電計画建設リスクアラームに関する通達》の3件の文書を示達していた。

 国家能源局の努爾・白克力(Nur Bekri)局長が会議で指摘したところによると、近年、中国の石炭火力発電設備の規模は急速に拡大し、石炭火力発電の生産能力過剰の潜在リスクが次第に顕在化しつつある。今年の新規設備規模は5,000万kWを超えると予想される。こうした傾向が続けば、今後数年で中国の石炭火力発電事業は現在の鉄鋼や石炭産業の二の舞になる。

 業界関係者の予想によると、石炭火力発電の脱生産能力対策は今後次々と進められ、今年から来年には多数の石炭火力発電事業が停止される。

 火力発電企業に倒産の波も

 実際には火力発電設備過剰問題が深刻化したのは昨年からである。

 中国電力企業聯合会の統計速報によると、全国の6000kW以上の火力発電設備の平均利用時間数の低下が続き、2015年は3,969時間、前年に比べ349時間減り、1978年以来の低い水準になった。

 一方、2015年末時点の全国火力発電設備は合計9.90億kWに達し、うち石炭火力発電設備は8.8億kWで、火力発電設備全体の89.3%を占めたが、設備の伸び率は電力需要の伸び率をはるかに上回っている。

 ここ2年、石炭価格の下落が続き、火力発電所の建設が拡張したが、その一方で再生可能エネルギーが増加し、電力需要は軟化した。

 電力企業関係者によると、石炭価格の下落により火力発電設備の投資回収率が相対的に高くなった。電力企業の投資熱も怪しむには足らず、地元のGDPに小さからぬ貢献を果たした。そのため、各地方は火力発電設備の淘汰には消極的である。

 こうした様々な影響により、火力発電設備利用率の低下傾向は今後とも中長期的に続くと予想され、火力発電の生産能力過剰状況はさらに顕在化する公算である。

 銀河証券の予測によると、2016年の火力発電設備平均利用時間数は4,007時間、2017年には3,839時間に下がり、生産能力利用率は50%以下に下がる可能性が高い。

 国電集団の張樹民総経済師が以前指摘していたところによると、小規模発電所や環境保護基準を満たしていない発電所は政府が強制的に閉鎖するまでもなく、経営難になって倒産に直面する。国電集団さえもキョンシー企業の処理、倒産の波やそれに伴う職員の配置転換問題に直面することになる。

 電力事業のアナリストによると、火力発電の生産能力過剰問題はますます深刻化しており、火力発電企業が倒産する日も最早遠くない。石炭企業と同様に、コストが相対的に高い中小企業がまず淘汰されることになる。

 (証券日報 9月27日)