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【石油・天然ガス】

米中経済協力100日計画で天然ガス貿易が強化 中国のLNG輸入構造に仕切り直しも (17/05/17)
2017/5/17
中国【石油・天然ガス】

 米中経済協力100日計画の早期成果が先頃発表され、中でも天然ガス貿易に関連する成果がエネルギー業界から注目を集めた。

 具体的には次のようになる。

 ・米国は中国及びその他の貿易パートナーが米国からLNGを輸入することを歓迎する。
 ・LNG輸出を許可するに当たり、米国が中国に与える待遇は、米国がFTAを結んでいない他の貿易パートナーに与える待遇を下回らないようにする。
 ・中国企業はいついかなる時でも米国のLNG輸出商と各方面のビジネス的考慮に基づき、長期契約も含めあらゆる形態の契約について交渉することが出来る。

 《毎日経済新聞》が取材したアナリストの多くは、米中の天然ガス貿易をめぐる協力の強化によって、既存の中国国内のLNG輸入構造に衝撃が及ぶと指摘した。

 金聯創の市場アナリスト苗瑩瑩氏によると、米国が中国のLNG輸入の長期契約相手国になると、中国のLNG供給源の多元化が進み、エネルギー安全保障にとって有利であるが、米国が中国市場を開拓しようとするなら、LNGターミナルの建設を強化するとともに、価格面で優位を占める必要がある。

  ●中国の天然ガス市場拡大の余地は莫大

 中国のLNG輸入の長期契約相手国は主にインドネシア、カタール、オーストラリア、マレーシア及びパプアニューギニアである。

 隆衆石化網のアナリスト王皓浩氏の解説によると、米国はシェールガス革命が生起してから、オバマ政権が初のLNG輸出ターミナルを承認した。世界の天然ガス需要源は主に北米、欧州及びアジア・太平洋であるが、北米は自給自足を実現し、欧州はロシアからのパイプラインによる供給に依存しているため、アジア・太平洋が米国の重要なLNG輸出市場になる。トランプ政権発足後、米国はLNG輸出をより一層重視するようになり、新規輸出事業の許認可の簡略化を明確にしている。

 一方、中国は大気汚染防止や一次エネルギーに占める天然ガスのシェア上昇などで必然的に天然ガス輸入を拡大することになる。中国は《エネルギー発展第13次5ヵ年計画》において、2020年に一次エネルギーに占める天然ガスの比率を10%に引き上げる努力目標を掲げ、また、今年4月に公布した《エネルギー生産・消費革命戦略(2016〜2030年)》は、2030年には天然ガスの比率を15%前後にすることを打ち出している。現在、一次エネルギー消費構造に占める天然ガスの比率は6%であり、天然ガス市場拡大の余地は巨大である。

 実際には2016年8月、広東大鵬LNGターミナルが初めて米国のLNGタンカーを受け入れた。これは、米国が天然ガス輸出を解禁して以後、初めてアジアへ輸出するLNGになった。

 米国のLNGは中国への参入を開始したが、苗瑩瑩氏によると、米国LNGの対中輸出は決して多いものでなく、中国のLNG輸入先は依然として、オーストラリア、カタール、マレーシアが主である。

 特筆すべきは、5月14日、中国石油天然ガス集団(CNPC)の王宜林董事長(会長)が「一帯一路」フォーラムにおいて、CNPCは200億ドルの契約を結び、米国からのものも含めて原油と天然ガスの輸入を増やすと表明したことである。王皓浩氏によると、この表明はCNPCが米国から天然ガスの輸入を増やすことを示すものであり、長期契約調印の公算は極めて大きい。

 王皓浩氏の分析によると、米国が中国のLNG輸入のもう一つの長期契約相手国になると、国内のLNG輸入源の多元化とエネルギー安全保障に対して、効果を発揮する。

 但し、苗瑩瑩氏は、米中天然ガス貿易が合意されると、中国のLNG輸入構造は改めて仕切り直しを迫られると指摘する。

 ●中国のLNG市場競争が激化も

 中国はすでに多数の国々とLNG長期輸入契約を結んでいる。米国が中国市場に参入しようとするのなら、その実力はいかほどであろうか。

 中国石油大学工商管理学院の郭海濤院長によると、米中天然ガス協力の見通しは米国のLNGのコストによって決まる。米国がオーストラリアとLNG供給をめぐって競争する段になると、米国は距離的に遠いため、運輸コストが極めて重要になる。

 昨年8月、7万トンの米国産LNGが広東大鵬ターミナルに到着するのに32日かかったが、それでもパナマ運河拡張のおかげで時間は短縮されている。

 苗瑩瑩氏の分析によると、オーストラリア、カタール、マレーシアから中国への距離は相対的に短く、オーストラリアから12日前後、カタールからは半月、マレーシアからは1週間前後で到着する。

 「米国が中国のLNG市場でシェアを拡大しようとするのなら、中国の需要の増加だけでなく、価格競争でも優位を占める必要がある」と苗瑩瑩氏は分析する。中国が結んでいる長期契約価格は基本的に1m3につき1〜2元余りであり、早い時期に結んだ契約は1元余りであるが、多くは2元余りである。現在、マーケットでは、多くは2元余りである。苗瑩瑩氏は「実際には1m3につき2元余りの価格は米国にとって完全に可能だ」と指摘し、米国が中国のLNG市場を開拓しようとするなら、価格優位によって他の国々のLNG価格に衝撃を及ぼすことが必要であるとの見方を示す。

 S&P Global PlattsのRegional Director, Oil Pricing, Asia & Middle EastのAlan Bannister氏によると、米国の天然ガス輸出インフラの多くはメキシコ湾沿岸で計画と建設が進められているため、今のところ中国への天然ガス輸出は現実的でない。

 但し、苗瑩瑩氏によると、米国はLNGターミナルの建設を加速し、輸出能力を増強して、国内の余剰の天然ガスをLNGの形で世界のより幅広い国と地区へ輸出しようとしている。

 (毎日経済新聞 5月17日)